男の小便といえば立って済ますのが古来普遍のスタイルのはずだが、最近では、女性のように洋式トイレに腰掛けて用を足す男性が増えているという。いくつかデータがあるようだが、半数以上という調査結果もあるらしい。
ちょっとにわかには信じられない。どうやったら、男が座って小便をするという発想になるのだろう。
「だって汚れるじゃない」
新聞記事で座りションを知り、「これは使える!」と思ったらしい妻が、したり顔でこちらを説き伏せにくる。
「いや、それは女性の発想だ。あれにはコツがある」
仕方がないので、洋式トイレを汚さずに済むやり方を教えてやった。さして特別なものではない。要は、腰を軽く落として(野球のバッティン グの構えに近い)、中央の水たまりの縁(へり)を狙うというものだ。狙い方にトイレを汚さないうえでのポイントがあるのだが、ここでは詳細は割愛する。
ともあれ、私はこのスタイルを、高校時代に友人たちから教わった。したがって、我流ではない。男性全員がこのスタイルだとまでは言わないが、少なくとも、一つの流派であることは間違いない。
ところが昨今、若い母親が女性の観点から息子に座りションを教えているという。
これはいけない。 大事なのは、正しい立ちションのスタイルを教えることだ。
「でも、そこまで立ちションにこだわることないでしょ」
力説する私に、横で妻が不平を言う。
「あのね、立ちションというのは、男のアイデンティティーなの」
きっぱりと私は言ってやった。
「男は元来、戦士なわけ。いつ敵から襲われるのか分からないわけ。だから小便も短時間で済ますわけよ」
「でも、家のトイレにまで襲ってくる敵なんていないでしょ」
正論で返してどうするんだよ。
「あのね、男はね、短時間でトイレを出ることで、『おれ、今の小さいほうだから』と無言でアピールしているの。そこを理解してほしいなぁ」
「座りションが一般的になれば、そのアピールも意味なくなるね」
…… ああ、どうすれば立ちションの美学を理解してもらえるのか。
かくも男女の溝は深い。
(2015年4月18日号・本紙掲載分から転載)
株式会社タウン通信代表取締役。地域紙「タウン通信」を多摩北部で約10万部発行、ウェブサイトでも地域情報を発信する。著書に
『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、
『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、
『起業家という生き方』(同、共著)、
『スポーツで働く』(同、共著)、
『市役所で働く人たち』(同)がある。
2020/12/7
タウン通信代表コラム「年内最終号につき」
タウン抄 「タウン通信」代表・谷 隆一コラム タウン抄 高齢者の健康促進の標語のようなもので「教育」「教養」というものがある。「今日行く」「今日用」に絡めたキャッチコピーだが、これはどの世代にも当てはまるものだろう。 今年は予想もしないウイルス禍でひきこもりがちな生活を余儀なくされたが、この状況が長引けば、感染症に罹患する前に心身を害してしまうのではないだろうか。 「コロナと地域」をテーマに各所への取材をスタートしているが、感じるのは、身体への影響だ。認知症が進んだ、歩けなくなった、オン ...
ReadMore
2020/8/24
猛暑に妄想する 短パンのススメ
タウン抄 「タウン通信」代表・谷 隆一コラム タウン抄 私は事務所に衣服を置いている。冬はジャケット、夏はスラックスと靴下をだ。 猛暑続きのなかでこの書き出しをすればピンと来る読者は多いだろうが、そう、私はふだん、だいぶ気楽な格好でいる。この原稿を書いている今は、ポロシャツと短パン。Tシャツではないだけ、今日は自分的にはフォーマルだ(今日は、月に1度の税理士が来る日でもあった)。 もっとも、当たり前だが、取材のときはそれなりの格好にする。夏の場合は、ポロシャツにスラックス。外出のときだけ ...
ReadMore
2020/8/24
凄いぞアベノマスク
タウン抄 「タウン通信」代表・谷 隆一コラム タウン抄 世の中を騒がせた“アベノマスク”だが、いや~、このマスクは本当にすごい。何がすごいかといって、その存在感だ。 下の写真(プロフィール)でもお分かりいただけるように、私は日頃メガネを着用しているのだが、医療用のマスクなどだと呼気がこもり、インタビュー時などはあっという間にメガネが曇ってしまう。 その点、布マスクは比較的通気が良く、医療用よりは快適に使える。というわけで、とりあえず手元にあったアベノマスクをいつしか私は愛用するようになっ ...
ReadMore
2020/8/24
林家久蔵さんに感動
タウン抄 「タウン通信」代表・谷 隆一コラム タウン抄 「コロナ」で外出自粛が求められるなか、行政機関もさまざまに動画で情報を発信している。 各市長からのメッセージ動画や、健康体操などのデモンストレーション、行政機関ではないが、多摩六都科学館は館内の紹介動画などを凝った演出で発信している。 そんななか、西東京市では、PR親善大使の面々が「三密を避けよう」などと呼びかけるメッセージ動画を配信。そのうちの一人、落語家の林家久蔵さんのメッセージ動画には心底感動した。 感動した理由は、そのサービ ...
ReadMore
2020/8/24
今週号について
タウン抄 「タウン通信」代表・谷 隆一コラム タウン抄 新型コロナウイルス感染拡大の緊急事態宣言を受け、この号(地域紙「タウン通信」2020年4月15日号)を出すべきかどうか本当に迷った。 ご承知の通り、本紙は広告が収入源であり、情報の多くが「人を集めてナンボ」という類いのもの。「人との接触を7、8割減らそう」と社会全体で頑張っているなかで、アクションを促そうという本紙の在り方は、根本からして今の社会状況に反している。 当然ながら、広告のキャンセルは続いており、付け加えていえば、この号も ...
ReadMore
谷 隆一